「諦(あきら)めるな」は無責任?

「諦めないで受かりました」「諦めないで良かった」という合格者の言葉を塾,予備校のチラシで非常によく見かけます。

 私も若い頃,受験指導の際によく「あきらめるな」と言ったものです。先日,中3生で実施した都立高校入試「合格発表シミュレーション」で久しぶりに「最後まで諦めるな」と口走ってしまいました。

 今でも高校生には「あきらめるな」というのに、なぜ中学生には「あきらめるな」を言わなくなったのか少し考えてみました。

 1つには高校入試と大学入試は違うということがあります。

 大学一般入試は当日点のみで判断されます。受験生一人で10校以上受ける場合もあります。たいていはチャレンジ校,相応校,安全校とレベル別に分けていくつか受けるはずです。そうすると例えば受験大学が10段階あるとすると、現状5レベルの実力があれば、「あきらめなければ」6レベルくらいのところに合格するかもしれません。

 ところが,現在の高校入試の場合,都立が第一志望であればほとんどの場合は都立1校と私立併願推薦が1校の2校しか受けません。そのため,「あきらめない」対象は都立高校に対してのみです。

 都立高校は受ける前に内申(通知表の成績)で3割が決まっています。あとの7割が当日点です。受験当日のペーパーテストで合否の残り7割が決まるということです。

 都立高校入試は,その1校だけの合否であり,大学入試のように何校も受験ができ、頑張れば少し上には受かるということにはなりません。当日点も7割とはいえ,内申が低いと足を引っ張ることもあります。さらに「あきらめるな」と言われること自体「その受験校は危ない」ということですから,不合格の確率は高いということになります。

 先日「あきらめるな」といったのは本当にもう少しがんばれば、受かりそうな子がいたからです。もちろん「あきらめない」で受ける以上,「死ぬほど勉強してください(死なねーから)」。今の時期はそれしかありません。成績上位の受かりそうな子ほど,逆に必死で頑張っています。「あきらめるな」と言われたなら,その子たち以上に頑張ってください。期待しています。