思いがけない訪問者

昨日のブログを書いた後に、ある出来事が急に思い出されました。

「学習や進路」とは違いますが、思春期に悩み・苦しんでいる我が子を支え続けたお母さまにとって、親としての幸せを感じる時とはこういうことなのではないか、と感じます。

それは、もう10年以上前の秋のことです。

中3生で不登校気味の男の子を個別指導でお預かりしました。

もともとの学習の遅れや学習習慣がついていないことなどで、なかなか「わかった」「できた」とはならず、我慢できなかったのか2ヶ月ほどで退塾してしまいました。

その後のことは気になりましたが、何も分からないままでした。

ところが、その翌年のゴールデンウィークが終わったころにその子が突然、塾にあらわれたのです。

話を聞くと、退塾したあと、いろいろあったけれど「高校には進学せずに就職をしたこと」,「今は仕事が楽しいこと」などを話してくれました。

高校に入学をして勉強を続ける、という話ではなかったので、用向きを考えながら話を聞いていました。

いろいろと話を聞いているうちに、塾に来た理由をやっと教えてくれました。

週末の母の日に初任給でお母さんに「ケーキとお酒をプレゼントしたいのだけれど、未成年でお酒のことはよくわからないから、誰かに聞きたかった。そういうことを相談できる人」と思った時に浮かんだのが私だったとのことでした。

照れくさそうにそのことを話す姿を見て、塾に来た頃とはずいぶんと変わったなと、感じました。

十分なことがしてあげられなかった塾なのに、頼ってくれたこと、驚きとともにもの凄くうれしかったです。

私もお酒はあまり得意ではないので、近所の有名な酒屋さんを勧めました。そこで店員さんに「母の日のプレゼント」であること、「お母さんはワインがお好きであること」を話してみたらいいのではと話しました。

「わかった」と言ったあとは、用事が済んだとばかりにすぐに帰っていきました。

お母さまの当時の表情が思い出されました。面談の度に、いつも辛そうに下を向いていらした顔が…。

でも、きっと週末の母の日には、その表情が息子の気持ちで大きな喜びに満されることを想像すると、私まで幸せな気持ちになりました。