親として

想像してみてください。

= 今、我が子は3歳。かわいい盛り。そんな我が子が39℃の発熱。ほっぺを真っ赤にして、肩で息をしている。涙目のまなざしで私を見つめ、かわいい手が「ママ」と言いながらのびてくる。 =

その時あなたなら子供に何と声をかけますか。

「どうしよう。熱が下がらないどうしよう?どうしたらいいかわからない。」と内心思っても、そうは言わずに「大丈夫。すぐに治るから。」と言ってその手を取り、励ましの言葉をかけると思います。

どんなに心配でも、その心配を言葉にして子供にかけることはしないはずです。

親の不安は子供に伝わります。母親がオロオロしていたら、その動揺を感じ取った子供はもっと不安になってしまいます。

「どうしよう」と子供の前で不安を口にすれば、子供はお母さんのその姿に「自分は今大変なのだ」と無意識に感じます。「病は気から」と言いますが、「大変だ(から治りにくい)」と思うと、実際に治りが遅くなるということもよくあることだそうです。

だから「大丈夫」と子供を安心させることをほとんどのお母さんは自然にやっているのだと思います。

しかし、学習や受験となると、親が子供にその不安をそのままストレートに伝えてしまうことが良くあります。

先日「中学入試を控えた我が子の成績が低迷中。そんな中で返却された模試の結果を見ると、このままでは第1志望校に手が届かない。それを見た瞬間に子供に「どうするの?」と聞いて、子供が戸惑った」という内容のエッセイを受験雑誌で読みました。

母親は「どうするの?」と自分の心配をストレートに子供にぶつけていますが、子供はその質問には答えることはできません。

「どうすればいいのか」がわかっていたら、実行しているはずです。「どうすればいいのか」を誰もわからないから不安なのです。 

わざわざ中学入試を受けようとする子であれば、努力はしているはずです。それでも、いろいろな理由から伸び悩んでいるのです。子供自身、結果を見て「どうしたらいいのだろうか」と思い悩んでいるはずです。

こういう時にどうしたらいいのか、それは熱が出ている子供と同様に「励まし」の言葉をおくることです。

私の尊敬する女性は我が子の中学入試が終わって、合格発表を待つ間に子供が不安を口にした時に「合格したくて努力をしたあなたを落とすような学校なら行かなくていい。そんな学校に価値はない」と子供に話したそうです。心中は我が子の合格を祈り、「もし不合格だったら」と心配はつきなかったと思いますが、そう話したそうです。

塾に勤め始めた頃にこの話を聞き、親としての覚悟に身が引き締まる思いがしたことを今でも覚えています。「我が子の努力したこと」を認め、不安にならないように励ます。なかなか難しいことですが、逆に言うと、親としてはそれしかできないような気がします。

当然、私自身の子供たちも全てが順風満帆に過ごしてきたわけではありません。病気、けが、受験、友達関係など、私の方が内心オロオロしたことも多々あります。でもその時にはこの方のエピソードを思い出し、「認めて励ます」をできる限りしてきたつもりです。(あくまで「つもり」であって、子どもたちにどう届いたかは分かりません)

不安や心配は先が見通せないからそういう気持ちになるのです。私もそういう時は、内心は動揺しているわけですから、どうしたらいいのかを聞き、調べ、時には神社参拝に行ったこともあります。でも、心配や不安の顔は見せないように努力しました。「親が不安がっている・心配している」ことを見せてしまうことにより、子供の不安や心配を増長させたくなかったからです。

ですから、当塾の保護者の方には「不安なことは、子供ではなく、塾に聞いてください」とお願い申し上げているのです。

当塾の保護者の方の多くの方は「見守っている」「応援している」というスタンスを崩すことなくお子さまを陰から支えてくださっています。塾としてはありがたく思いますし、個人的には本当にステキなお母さん方だと感じています。そういう方々の少しでもお役に立てることを幸せに思います。