言霊

親の言葉は子供の心にダイレクトに届く。

私が母親に言われてよく覚えているのは「お前は橋の下から拾ってきた子だ」という言葉だ。その言葉を言うと次に必ず祖母に「そうだよね」と聞く。祖母は「そうだよ」と言うのがお決まりだった。

むかしは定番だった、この「橋の下から拾ってきた」という言い回しは、現代では立派な虐待だそうだ。

私自身、普段は半分冗談として受け流せていたが、例えば、テストの点数が悪かったりした時にその結果を見て、正面からそれを言われ、「お前は橋の下から拾ってきたから点数が悪いが、私が生んだ子(弟)は出来がいい」などと言われると、傷つくし、しまいには「橋の下の子だから○○なのだ」という考え方が身につき、自己肯定感がひどく低くなってしまった時期もあった。「本当のお母さんに会いたい」と思ったこともあるほど、深く傷つく言葉だった。

逆に何かで褒められるようなことがあれば、「さすが私の子」と言われ、その言葉は素直にうれしかった。

子どもには、親のきつい言葉は心をグサグサと突き刺す矢として届き、優しい言葉は心がポッと温かくなる発火剤のようなものだ。

人の心はナイーブで柔らかいものだ。

大人でもひどい言葉を投げかけられれば傷つくし、温かく優しい言葉は心を温かくしてくれる。

子どもの心は大人以上に繊細だということと、親の言葉は他人の言葉以上に深く心に突き刺さるということを常に覚えておきたい。

日本には古くから「言霊(ことだま)」という考え方がある。つまり、言葉には「発した人の想いが宿り、力をもつ」と信じられてきた。

その言霊の力が、良くも悪くも子供の心にダイレクトに届くということだ。

がんばったことを認め、応援する。子どもの心には、前向きで明るい言霊を届けたい。